私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
するとそこで、一層の拍手が巻き起こる。
ひとつの試合を終えて、次の試合のちびっこ選手が入場してきたところだった。
……それも、そのはず。
次の選手は、恐らくこの大会の優勝本命の子。誰もが知る、有名な御方だ。
「イェー!皆の者、よく来た!シクヨロぉーっっ!」
観客に向かってそう叫びながら、手をぶんぶんと振っている。「わはは!」と笑って、堂々と入場してきた。天王様と同じく、蜂蜜色の金の髪が風に靡いて輝く。
弱冠10歳の偉そうな振る舞いは、大人からは可愛らしく思えるようで、振り撒いた無邪気な笑みに応えるかのように観客からは「天子様ぁー!」と声が上がっていた。
天帝・帝釈天様の御子。天王様の歳の離れた弟君。
梵天・豹牙(ひょうが)様だ。
天子である豹牙様は、試合場に上がっても未だ体全体を使って大袈裟なお手振りを続けている。
体の向いている方向は、高位神族の観覧席だ。
「兄上ぇーっ!兄上!」
どうやら、実兄の天王様に向けていたものらしい。
可愛い弟君の登場を立ち上がって見守っていた天王様は、柔らかい笑みでお上品に手を振り返していた。