私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。

「兄上!俺絶対優勝するー!約束守ってーな!」

笑顔のまま頷く天王様に、弟君の豹牙様はぱあっと満面の笑みとなった。



……仲睦まじい兄弟、素敵!

と、この光景を目にしたこの会場にいる誰もがそう思っているだろう。

心がほっこり和む一場面だ。



(……あ、そういえば)



そこで、私はハッと気付く。



そう言えば……天子・豹牙様って。

確か三人が善見城潜入中に、翼が仕えていたという『うちのお坊っちゃん』だったはず。

そう思って、翼の方へと振り向くと、当の本人はすでにお坊っちゃんの登場には気付いていたようだった。

観客の群衆に紛れた中で、暖かい視線を送って密かに見守っている。

その横顔が物語っていた。

《下に降りて試合見に行ってもいいかなぁ?》

……剣士の端くれだからという理由だけではなく、本当は、お坊っちゃんの勇姿を近くで見たかったのだと。



「……あれか。おまえがチクビーム教えたお坊っちゃんわ」

隣に並んで同じ方向を向いている聖威が、そう呟いた。

翼は「わはは」と笑う。

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