私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
16.【聖域】の力
「す、すいません、あなたは……」
突然話しかけられた羅沙姫は、頭を気持ち低くしたまま、首を傾げている。
善見城への登城が初めてだったのか、韋駄天様の顔を知らないようだ。
だが『ニセモノのヤツ』は、図々しくその名を騙る。
「私の名は、韋駄天。天部衆に籍を置く、善見城騎士団の武官だよ」
「はっ!て、天部衆の武官さん!」
「ああ。大活躍した姫剣士に話を聞きたくてね?」
「は、話……ですか?」
そう言われた姫は、訝しげな視線を送っている。
そんなお偉いさんに何故話しかけられるのかと、不審に思っているのだろう。
元々人見知りが激しいのか、警戒心たっぷりだ。
……しかし、それだけではない。
姫は本能で気付いていたんだと思う。
この人物は怪しい。警戒すべき者だ、と。
問い返されたニセモノ韋駄天様は、ニヤリと笑う。
いつもの顔貌が崩れるほど。
(……っ!)
その笑みを目にした途端、全身に寒気が通り過ぎて、体を震わせてしまった。
ただ単に、その笑みが不気味だったからではない。無意識に体が反応したような感じだった。