私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。

そして、彼の持っていた苺を少し頂戴する。それは、とっても甘酸っぱい苺だった。



……ちっ。突然変なヤツ登場したな。

おかげで仕事が捗らなかった。

まあ、苺美味かったし、いいか。



だが、しかし。

彼はその日もその次の日も『毎晩寝れないの?』と、やってくる。……またか!しつこいな!

そして、また苺だの甘味だの持ってきて、ただ世間話をしていく。どこに売っている何が美味しいとか、どこの領地の景色が綺麗だとか。たまにこの世界の未来展望とかも語る。身なりは簡素なのに、話しの内容はまるでお貴族さまみたいだ。

こんな夜更けに一人で泉の辺りにいる女に話しかけるだなんて、変なヤツ。暇人。

その言葉そっくり吐いて、こっちが嫌味のひとつを投げかけても怒らず、常にニコニコしてるし。イケメンっちゃイケメンだけど。

……だが、その『笑顔の仮面』が気になって仕方ない。

掴みどころのない彼の、その頭の中の本音も。



そんな他愛もない話をする日々を重ねて、二人は距離を近づけていった。

会う場所はいつも同じ、四阿。

何度も顔を合わせているのに、名前以外の互いの素性は一切明かさず。

彼は、狼毅とだけ名乗った。
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