私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
彼の視線の方角は、大破した幌馬車の向こう。そこには、距離を取って対峙している二人がいた。
ローブ姿の少女と、幌馬車の御者だ。
「何処の何者だ!罪人護送の馬車を襲撃して何を企んでいる!」
「へぇー?この私とやろうっての?」
「賊は潰す!」
挑戦的な態度の少女に対し、御者は深く身構える。
ブツブツと呟くと共に、足元から白い光の帯が立ち上った。
その光景を目にして、ハッと思い出したことを咄嗟に口にした。
「……その御者、上級神術士です!」
「へ?」
罪人護送の際は、こういう襲撃を見据えて神術士を同伴させるものだ。
本来、善見城から派遣された中級以下の神術士が同伴するのだけど、今回は韋駄天様の私刑ともあって、韋駄天様の側近の神術士の一人が同伴していた。
その同伴の神術士ーー御者は、まさに今、言霊の詠唱を経て、神術の術式を発動させようとしているのだ。
韋駄天様の御付きの神術士だ。しかも、上級。強い……はず。
まさに、緊迫の瞬間。
……なのだが。
「じょーきゅーしんじゅつし。何だそりゃ」