私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
だが、魔力が掌中されて架威の頭上でじわじわと高められていることを察知したのは、私だけではない。
それを見ていた傍聴観衆からは、恐怖からの悲鳴だけではなく叫び声も聞こえる。
「魔力、魔力か?!」
「ま、魔族だ……!」
魔族と同じ魔力を発する者が登場し、攻撃の手を向けていることが、観衆を混乱の渦に陥れた。
だが、更なる混乱の渦を呼ぶ。
架威の頭上で大きくなっていく魔力は、やがて紫の色をつける。
紫の靄が、不規則に蠢いては高められていく。
(魔力の紫の靄?……まさか!)
私の知識によれば、この紫の靄はとんでもないものだ。
ーーー【紫の門】。
魔族が使う、空間転移術。魔界から異世界への通り道だ。
魔族が異世界へ侵攻する際には、必ずこの【紫の門】を通ってやってくるのだ。
その魔族が使う空間転移術を、架威が使用した。
と、ならばそこから出てくるものは……!
そして、私の予想通り、大きく高められた紫の靄は、やがて真ん中に穴を開けた。
まるで、扉が開いたかのように。
そして、そこから聞こえたのは、遠吠えのような耳障りな鳴き声。
その主が魔力を撒き散らして姿を現した時。観衆からも絶叫に近い悲鳴が響いた。
私も体が硬直して、息を呑むのみ。
「む、【紫の門】?!」
「魔族、魔族だぁぁぁ!」