私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
ほんの一瞬だけ下に落とした視線は、切なかった。
「もう、わかってますよ……【宿曜】のためなら邪魔するものは消す、実の妹の私にでさえも手を掛ける、魔族を喰らって魔力を得る……兄上はもう、取り返しのつかないところまで来ている。……だから、覚悟したのです」
兄を慕う『家族の情』というものを、心の奥に押し込めて、切り捨てる『覚悟』をした。
それは、自分がルナドラグの軍人だからでも、【宿曜】という使命を科せられたからでもないだろう。
実の兄妹だからこそ、だ。
そんな決心を込めて今一度、星宿権杖にゆっくりと手を翳す。
再び、あの金の色を付けた格式高い質神力が手元に集まってきた。
もう一度、その『聖域』の扉を開けるのだろう。
……架威を捕らえるために。
「……くっ!」
架威もそれに気付いたのか、自分の防壁となっていた結界を解くとすぐに、背を向けてその場から駆け出している。
敵わないと理解したのか、残念なことにその場から逃亡を図ろうとしたのだ。
「……はぁ?逃げる?!武士の風上にもおけんな!」
翼が立ち上がろうとするが、それを聖威が手を出して制止する。