私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
「聖威っ……!」
「ケリは私が付ける」
そして、聖威は無駄なことは何も言わずに、目の前の星宿権杖を握って振り上げた。
飾りのついた杖先を、逃げる架威の背中に向けて言霊を詠唱する。
「聖に祝福されし、月詠の鍵を引く……」
また、先程と同じ光景が繰り返される。凝縮された神力が、細く長い金の杖に満ちるのを。
さっきよりも光の量は多く、天にまで昇るほど。
金の神力の光が放たれる寸前、架威は少しだけ振り返った。
今まで以上に憎しみが込められた目付きを、聖威ただ一人に向けていた。
「【三宝荒神】……!」
そして、再び。『聖域』の扉が少しだけ隙間を開ける。
扉から漏れる神々しい神力は四方に放たれ、またしても私らの視界を奪った。
……聖威の凛とした横顔が、頭に過ぎる。
両親や親族の命を奪われ、独りにさせられて。
特級犯罪人となった実の兄を追うため、貴族のお嬢様が軍人となり。
これ以上、兄に罪を重ねて欲しくなくて説得に当たっても伝わらず、むしろ本気で殺されかけて。
……なのに、前を向いて。
悲しみ押し殺して、然るべき決断をした。