私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
ぎゃいのぎゃいのと突然口論が始まった。
何の事情も知らない他人の私がいるのに、こんなに口喧嘩ができるものなんだろうかと、私は口を開けてポカンとせざるを得ない。
「すまん。いつものことだから、気にするな」
左上の方向から低い声が聞こえてきた。誰かと思ったら、木の麓にいた、ローブで身を隠していた男性だ。
聖威同様、彼もローブを脱いで顔を出している。背も高く精悍な顔立ちで、筋肉質だ。短い黒髪が多少爽やかだと思ったけれど。
って、いつものことなの?この、口論というか、小競り合いというか……。
その証拠に、短い黒髪の彼は、小競り合いを続ける二人をあまり構っていない。
二人を仲裁する様子もなく、隅の小さな台所へ赴き、お湯を沸かしていた。
「男の一人もあしらうテクなくて、何が分隊の副隊長ですかー!軍の勉強じゃなくて恋愛の勉強しなさいなー!」
「や、やかましい!……おまえも、自分が魔族であることを念頭において行動しろ!いつ狙われるかわからねえぞ!」
「わー!おまえの母ちゃんでべそー!……いや、奥方はでべそではなかったか」