私らと、ざまぁするぞ!〜冤罪で追放された令嬢に手を差し伸べたのは異世界の戦士たちでした。
46.諦めの悪い男
いつの間にか、侍女の手によって食事の席は片付けられ、しっかりとお茶の準備が出来ていた。
皿に盛られた私のチョコレートは、そのまま置いてあった。
気を取り直して、天王様とお茶の席に着く。
雲ひとつない青空、風ひとつ吹かない穏やかな天候の中。
泉の水面に陽の光が反射して、泉のほとりの四阿は明るい。
「……」
そんな中、天王様はお茶を一口、口に含んでは何も言わず、泉のほとりの庭園の景色を眺めていた。
お茶と共に景色をも味わうように。
何かを思い出しては、感慨深い笑みを浮かべていた。
……聖威のことを、思い出しているに違いない。
昨日のお茶の時間で、天王様からお聞きした話なのだけれども。
何を隠そう、この泉のほとりの四阿は、夜な夜な聖威と逢瀬を重ねていた場所なのだそうだ。
夜も更けた頃、人気のないこの白い四阿で一人。
侍女服を着た美しい少女が、夜空に輝く月を黙って見上げている。
月の光に照らされている様が、何故か神々しく見えて。
天王様は、ひと目見たその時から、聖威のことを只者ではないと感じていたらしい。
……まさか、星見の最高峰【宿曜】だとは、思ってなかったようだが。