男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 サイラス様との口づけは甘露のように甘く、蕩けるように甘美だ。与えられる悦びに体は自ずと熱を帯び、考えるよりも先に薄く唇を開いて彼の舌を招き入れる。
 快感に酔わされて、逆上せたようにまともな思考がままならない。身も心もぐずぐずになって溶けてしまいそうだった。
「セリーヌよ、お前は永久に俺の隣にあり、俺の人生を照らし続けろ」
 幾度も角度を変えながら繰り返される口づけの合間に、サイラス様の囁きを聞く。胸は高鳴り、彼への思いが燃えるような熱を持って膨らむ。
 こんな台詞を聞かされれば、愚かにも期待をしてしまいそうになる。私がまるで彼にとっての特別であるかのように。
 ……いいえ、思い上がっては駄目。この二週間ほどで、私は彼の冷酷な仮面の裏にある優しさも誠実さも知っている。しかし、その根底にあるのが『契約』であることを忘れてはいけない。
 ここで私が崩れればセリウスも共倒れになることを肝に銘じ、心の均衡を失うな――!
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