男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 セリーヌにも語った通り、彼女と同じ寝台を分け合って眠るようになって、浅い眠りは俺にとって苦痛ではなくなった。それどころか、訪れる夢はどこまでも心地よく、包み込むように優しいものへと変わっていた。
 そんな優しい夢の中で、俺の一歩前をゆくセリーヌが柔らかな笑みを浮かべて振り返る。
『サイラス様』
 艶やかに色づく唇で名を呼ばれ、否応なしに胸はときめく。
 俺は眩いばかりの彼女の微笑みに目を細め、続く言葉を待った。ところがセリーヌはスッと笑顔を引っ込めると、これまでの柔和な雰囲気から一転し、悲愴感の篭る目をして口を開いた。
『あなたが約束を果たしてくださる限り、私たちの契約が途切れることはございません』
 っ!! 耳にした瞬間、俺は胸を貫かれるような衝撃にカッと目を見開いてうつつの世界に舞い戻る。優しい眠りは一瞬で霧散していた。
 ……夢、か。
 荒い呼吸を繰り返しながら、セリーヌの頭の重さを受けているのと反対の手を持ち上げて、額に滲んだ脂汗を拭う。
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