男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「はい。僭越ながら、父が若き日の陛下のご指導にあたらせていただいたことは聞き及んでおります」
 サイラス様が皇帝でありながら軍部出身という珍しい経歴を持つことは周知の事実だ。もともと、彼の皇位継承順位は下位だったのだ。
 前皇帝陛下は正妃の他にも数多の側妃を持ち、後宮には多くの皇子皇女が暮らしていた。サイラス様はそんな後宮で第五皇子として産声をあげた。後宮は彼にとってあまり居心地のいい場所ではなかったのだろう。サイラス様は十歳にして自らの意思で軍部に身を移す決断をしたのだが、その際に皇子という身分を考慮した優遇は一切望まなかったそうだ。
 そうしてサイラス様は、年長の皇子らが不慮の事故や病気によって死去し、皇位継承者として宮廷に呼び戻されるまでの八年間を軍で過ごした。その間に時の最高司令官であった父から一切手心なしの厳しい鍛錬を受けてめきめきと力をつけ、実力で司令官補佐という軍ナンバーツーまで登り詰めていた。
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