男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 私は以前から皇帝としてのサイラス様に畏敬と敬愛を抱いていた。契約の情事を持ち掛けられても、皇帝たる彼に対して尊敬の念が薄れることはなかった。それが今は、サイラス様を皇帝陛下としてではなく、もっと身近な存在に感じるようになっていた。
 この思いは弟のセリウスに抱く親愛の情に少し似ているけれど、両者は根幹の熱量がまるで違う。
 サイラス様に抱きはじめている、この思いはなんなのか……。
 混沌とした思考を振り払うように緩く首を振り、卓上からグラスを取り上げる。クイッと傾けて、私はこれらの思いを水と一緒に乾いた喉に流し込んだ。
 そのまま胸のむかつきを堪え、目の前に置かれた料理を口に運ぶ。
「そういえばサイラス様、ここのところニーナを見かけないのですが元気にしていますか?」
 三口目を食べたところで限界を感じてフォークを置き、ここ数日気になっていたことを尋ねた。
「ニーナは繁殖のため、今は雄のピューマと一緒に過ごさせている」
「え? ニーナにお婿さんが……!?」
 サイラス様の回答は予想外のものだった。
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