男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 結果的に、サイラス様は現在ラインフェルト帝国軍最高司令官を併任するラインフェルト帝国建国以来初の軍人皇帝となっている。
「彼のような人格者を父に持てて、其方らはさぞ鼻が高いことだろう」
 サイラス様の先導で庭園を抜け、中庭に出てしばらく進んだところで彼が気安い様子で口にした。
 この言葉に隣のセリウスがピクリと眉根を寄せ、隠そうともせず不機嫌な空気を漂わせるのを感じ取り、私は慌てて当たり障りのない答えを返す。
「はい。大変誇らしく思っております」
 不満を前面にしたセリウスの態度が気が気でなかった。
「……あんな奴、全然人格者なんかじゃない。いったいなにを見てるのさ」
 ところがセリウスは私の心配を余所に、サイラス様に対し失礼極まりないことを口走る。
 セリウスの発言を聞き付けたサイラス様はピタリと足を止め、緩慢な動作で一歩後ろに続く私たちを振り返った。
「ほう、それはまるで俺の目が節穴と申しているようではないか。その方、なかなか面白いことを言う」
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