男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 俺は、清らかで柔らかな心に知性的な思考を備え、しっかりと一本芯の通った強さを持った彼女に惹かれた。彼女が及んだ身代わりという無謀な行動も、弟への情が衝き動かしたのだと今は一定の理解をしている。この行動の是非はともかく、今では彼女の自己犠牲をも厭わない情の深さに好感すら覚えていた。
 ……愛情深くありながら、男にも劣らぬ知性を発揮するセリーヌ。彼女は母や他の女たちとは違う……いいや、浅ましき魔物らとセリーヌを同じ土俵で比較することすらおこがましい。
 俺は麗しい女神を、永遠に俺だけのものにしたいと望んだ。愛しいセリーヌを取られたくない、奪われたくない、そんな思いに衝き動かされて連日連夜この腕に抱き締めた。
 彼女が微笑めば、俺の世界が鮮やかに色づいた。色彩を持たぬモノクロの世界が、彼女を中心にして輝き始める。その輝きに魅せられた。どこまでも眩く、セリーヌだけが俺を惹き付けてやまない。
 そんな天上の女神への溢れるほどの愛を、俺は愚かにも抱き締めて温もりを分け合うことでしか伝える術を持たなかったのだ。
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