男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 だが、俺はもう間違わない。教えてくれたのは、他ならぬセリーヌ。傲慢に押し付けるばかりが愛ではない。包み込むような優しさで受け止めることも、また愛なのだ。
 俺はドクトールに席を外させると、戸惑いを前面にするセリーヌの前に躊躇わずスッと膝を突いた。
「セリーヌ、なにを今さらと思うかもしれない。だが、どうしてもお前に伝えたいことがある」
 俺が他者の前に膝を突いたのは初めてだった。皇帝たる俺がこれをするのは負けを認め屈服を示す時で、さぞ屈辱的な行為なのだろうと思っていた。
 しかし今、セリーヌの足元に膝を突きながら、俺は胸に不思議な高揚を覚えていた。
「サイラス様!?」
 セリーヌが目を丸くして俺を見下ろしていた。取り繕わない自然体の表情が美しいと思った。
 彼女の愛を得るために心と言葉を尽くしたい。彼女と彼女の腹の子に生涯の愛を誓いたい。
「愛している。ただ唯一、お前だけを愛している」
 彼女の右手を戴くように取り、その指先にそっと口付けてから丁寧に言葉を紡ぐ。
「……うそ」
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