男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 俺はここで一度言葉を区切ると、しっかりとセリーヌの目を見つめ再び唇を開く。
「お前を誰よりも幸せな妊婦にし、誰よりも幸せな母にする。なにより俺の唯一無二の妻として、誰よりも幸多い人生を歩ませてみせる。生涯を懸けて、お前に愛を伝えていく。どうか俺に、その機会を与えてくれ。俺の妻になって欲しい」
 セリーヌの小さく震える唇は、なにも言葉を返してはくれない。しかし、彼女の目に薄っすらと涙が滲み始めたのは、きっと困惑だけが理由ではないはずだ。
「セリーヌ。俺の生涯の愛は、ただ唯一お前のもの。もちろん、腹の子には父として精一杯の愛情を約束する」
「……あなたの唯一無二の妻ならば、それは一国の皇妃ではありませんか」
 長い間を置いて、セリーヌが聞こえるか聞こえないかの声で口にした。そこには、怯えや不安、期待といった感情が複雑に折り重なっているように感じた。
「妃どうこうは関係ない。俺がお前の人生に影を落とすありとあらゆる障害を防ぐ盾となって守る。お前の歩む道に茨はない。……俺の妻となり、俺の子を産んでくれ」
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