男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「私はプロスペール殿の葬儀の折に、面差しのよく似たあなた方姉弟を見知っておりました。そうしたこともあり違和感は最初の挨拶の時から覚えていましたが、確証を得たのはあなたが勤務をはじめて一カ月が経った頃です。階段テラスで私への嫉妬心を隠そうともせず、ただの従者に向けるには不可解な独占欲を剥き出しにする陛下を前にして確信しました。もっとも、この違和感は脳筋のダボットも本能的に感じていたのだと思います。ダボットが他の者にはあり得ぬ甲斐甲斐しさであなたの手助けをしていたのは、おそらくその為でしょう」
「……気づいておられたんですね。なんてこと、私はこれっぽっちも……」
 驚きと同時に、私の脳内に初見でゼネダ様からかけられた『あなたは本当に男ですか?』という言葉が蘇った。侍従長官とは伊達ではないと、改めてゼネダ様の観察眼の鋭さに舌を巻いた。
「知りながら口を噤んでくださっていたんですね。……本当に申し訳ありませんでした。それから、ありがとうございます」
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