男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「謝罪にも、礼にも及びません。別に私はあなたへの親切心や忠義心で口を噤んでいたわけではありませんから。遠からず陛下があなたを妃に指名することは目に見えていた。私はあなたがサイラス陛下の正妃に、そしてラインフェルト帝国の国母に相応しいと考えた。帝国の未来にとってこれが最善と思い、この選択をしただけです」
 これ以上はもう、驚きようなどないと思っていた。けれど、ゼネダ様の続く言葉はさらなる衝撃をもたらした。
「そうでなければ、あなたの嘘を早々につまびらかにし、宮廷から追い出していました。私はいつだって、己の最善と思う行動しかしません」
 ゼネダ様は涼しげな表情で言い切った。
 それは、帝国のより良い未来を思う義真に満ちた言葉。一方で、彼の言葉にはサイラス様やこれから皇妃となる私に対する媚びや忖度が微塵もない。清々しいほど一貫したその姿勢に、頭が下がる思いだった。
 同時に、私は国民から絶対的な支持を得るサイラス様の政権運営を可能にしている根幹の部分に触れたような気がしていた。
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