男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「……サイラス様」
強い光を湛えて真っ直ぐに私を見つめるアメジストの双眸に安堵を覚えかけたのも束の間、開いた目から一気に情報が押し寄せてくる。
サイラス様に抱き締められた私のすぐ前には、肩を激しく上下させながら両手を広げて立つほっそりとした女性の背中があった。その足元には仰向けに倒れ込んだサリー様と、彼女を拘束する近衛兵たち。さらにサリー様の手を銜えたまま唸るニーナがいた。その数メートル先には、鈍く光る短刀と朱色の滴りが見えた。
……血? サリー様の血かと思ってニーナに銜えられた手もとを注視するが、訓練されたニーナはこんな状況にあっても肌に牙を突き立ててはおらず、噛んでいるのはまさかの袖だった。
では、血は誰の……?
「サイラス陛下! お怪我の状態を見させていただきます。……隣室で待機するドクトール様を呼んで来い!」
部下に指示を叫びながら駆けてくる近衛長官のダボット様の声で、ハッとしてサイラス様の全身に目線を走らせる。
「お怪我をなさっているのですね!」
強い光を湛えて真っ直ぐに私を見つめるアメジストの双眸に安堵を覚えかけたのも束の間、開いた目から一気に情報が押し寄せてくる。
サイラス様に抱き締められた私のすぐ前には、肩を激しく上下させながら両手を広げて立つほっそりとした女性の背中があった。その足元には仰向けに倒れ込んだサリー様と、彼女を拘束する近衛兵たち。さらにサリー様の手を銜えたまま唸るニーナがいた。その数メートル先には、鈍く光る短刀と朱色の滴りが見えた。
……血? サリー様の血かと思ってニーナに銜えられた手もとを注視するが、訓練されたニーナはこんな状況にあっても肌に牙を突き立ててはおらず、噛んでいるのはまさかの袖だった。
では、血は誰の……?
「サイラス陛下! お怪我の状態を見させていただきます。……隣室で待機するドクトール様を呼んで来い!」
部下に指示を叫びながら駆けてくる近衛長官のダボット様の声で、ハッとしてサイラス様の全身に目線を走らせる。
「お怪我をなさっているのですね!」