男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません！

　サイラス様は私を横抱きにして踏み出した。
「ハッ！　ハハハハハッ!!　やはり皇妃ともなると守りが堅い！　あの腹の大きなピューマのようにはいかなかったか！」
　走り出すサイラス様の後ろでサリー様が上げた不気味な笑い声と怨嗟の叫びに、ホール内がざわめいた。
　……腹の大きなピューマ？　サリー様はいったいなんのことを言っているのか。
「奴のように私の刃で直接切り裂くことこそ叶わなかったが、ちゃんと神は見ていてくださった！　産み月よりひと月も早く産気づいてしまっては、腹の子は無事に産まれてはこられんわ！　これは、報いだ！　我が主が己の命よりも尊んだ最愛の子をお前は奪った。それにより主は絶望し、やがて皇子の後を追って亡くなった。これは不当に皇位を簒奪した盗人エリザベス、お前への報いぞ！」
　サリー様がニーナの母ピューマを残虐な方法で殺害したことを、大きな衝撃と共に知る。
　私を抱くサイラス様の腕が強張ったのが分かった。陣痛とは別の苦しさが全身を走り抜けた。
「お黙りなさいサリー！」