男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 私は襲い来る陣痛の波をサイラス様の腕の中で歯を食いしばって凌ぎながら、自ずと耳はよく通る皇太后様の声を拾っていた。
「ハッ! 私は後宮にあって、皇子らが元気だったことを誰よりもよく知っている。そんな健康そのものの皇子が四人も、次々と不審な死を遂げた! 病死や事故、そんな偶然なわけがない! 彼らは何者かの手で殺されたのだ! 貴様が殺したのでなければ、誰が殺したというのだ!?」
「たしかに、皇子らの死は病気や事故によるものではありません。皇子らを殺めたのは――」
 しかし話が核心に触れようかという直前で、途切れ途切れだった皇太后様の声はついに聞こえなくなった。


 痛みの波が引けば束の間休みを取り、再び陣痛が始まれば、またサイラス様の手を握って痛みに耐えた。
「……っ」
「セリーヌ、あともうひと息だ」
 そんな時間をどれくらい過ごしただろう。痛みの周期が狭まって、私はついに出産の時を迎えていた。
「俺がついている」
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