男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「ありがとうございます。皇太后様には、なにからお礼を言ったらいいのか。それに、嫁入りに際してのご挨拶もまだしておらず……。皇太后様、改めまして、ふつつかではございますがサイラス様の妻として皇妃として精一杯務めてまいる所存です。なにとぞ、よろしくお導きのほどよろしくお願いいたします」
「なんてよくできたお嫁さんなの。セリーヌ様、どうか末永くサイラスをよろしくお願いいたします」
 目に涙を溜めてセリーヌと向き合う母……。何年振りかに目にした母の横顔は魔物のそれではなく、年相応に皺が刻まれた初老の女の顔をしていた。
 今日はまだ、セリーヌと母以外の女の顔を見ていない。しかし、もう女の顔が魔物に見えることはないだろうと、そうな予感がした。
「はい。……あの、皇太后様。どうぞ皇子のお顔を見てあげてください」
「まぁ! なんて凛々しいお顔立ちでしょう」
 俺をひとり蚊帳の外に、母とセリーヌはこの短時間ですっかり打ち解けていた。
「この子はきっと素晴らしい青年になるわ」
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