男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「なんで? どうして僕がろくすっぽ顔を見たこともない父上の死後の平安を祈らなくちゃならないの?」
 無邪気な問いかけに、私は返す言葉に窮した。
 ふたつ下のセリウスは病気がちで、ほとんどの時間を屋敷の中で過ごしているせいか、十歳という年齢を考えると少し幼いところがあった。手がかかる反面そんな弟が可愛くて堪らなかったのだが、率直すぎるこの質問にはさすがに戸惑いが隠し切れない。
「これにてラインフェルト帝国軍初代元帥・プロスペールの葬儀を終える」
 セリウスと長いこと目線を絡め、私がついに重い口を開きかけたその時、参列者の先頭に立つサイラス皇帝の朗々とよく響く声が静寂を割った。
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