男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
第二章
四年振りに彼を目にした瞬間は、意思とは無関係に心が震えた。
黒々として艶のある髪を無造作に後ろに流し、澄んだアメジストの瞳で私を見下ろすサイラス様は当時よりも重みと風格を増し、王者の自信と貫禄に溢れていた。
初めて口上を述べる時は緊張で喉がカラカラになって唇が震えそうだったけれど、家で何百回と唱えて練習しておいたのが功を奏し、掠れたりもせずはっきりと言い切ることができた。
「ならば、さっさとその長ったらしい髪を切れ」
「え?」
けれど名乗りの後、彼から放たれた言葉の意味には、すぐに理解が追いつかなかった。
「仮にも俺の従者になろういう者が長髪をなびかせてやって来ようとは見苦しい。俺は身辺に軟弱者は置かん」
続く台詞を受けて、私はやっと彼の真意に思い至った。
「切れんのか? ならば俺の従者に其方は不要だ。早々に去るがいい!」