男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません！

「そんなの認められるわけがない！　それに姉様は今年の社交シーズンこそ相手を探さないと結婚が難しくなってしまうのに……。男の形でそんなことをしているうちに、大切な婚期を逃してしまうよ!?」
　セリウスはどんなに学問に精通しても、やはり世情には疎い。それらは世間に出て、荒波に揉まれてこそ身に着く感覚なのだと、必死に言い募る彼を前にして痛感する。
　先立つ物がない状態で、私たちは明日から住居すらなくすのだ。
　……状況はとうに社交やら婚期やら、それどころではなくなっている。他の貴族らのように社交シーズンを過ごすなど、もう夢のまた夢なのだ。
　とっくに結婚など諦めていた。そうして、そう遠くない未来に私はセリウスとの生活を守るため我が身すら金銭に代えることになるだろうと、漠然とではあるが予想していた。