男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 困惑を前面にしていた彼の目が、深い悲しみに染まっていくのがわかった。ここ最近は特に体調が優れなかったこともあり心痛を与えないようあえて口を噤んでいたけれど、明らかに傷ついた彼の様子を前にして果たしてこの選択が正しかったのか自信がなかった。
「……そんな、どうして。どうして僕にそれを言って……いや、なんでもない」
 セリウスは言葉途中で震える唇を噛みしめて、力なく俯いた。
「とにかくセリウス、今回のお話を受けましょう。私は従者として宮廷に上がり、あなたはサルランサ地方の保養所で療養するの。そうしてあなたが健康を取り戻したらその時は、さっき話した通りよ」
 私は罪悪感を覚えながら、トンッと彼の肩を抱き締めてあえて明るい口調で続けた。
 セリウスは顔を上げることなく、しかしほんの小さく頷いた。
「……セリーヌ姉様、絶対にその言葉を忘れないで。元気になって戻ってきたその時は、必ず僕が姉様と入れ代わるから……!」
「ええ!」
 嗚咽混じりに告げられた台詞に、私は小刻みに震える肩を固く抱き締めて答えた。
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