男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 ゼネダがこんなふうに人を評する姿など見たこともなく、興奮気味に語る彼の様子に大層驚いたものだ。しかしセリーヌへの評価に関しては、俺自身の思いとピタリと同じで、おおいに賛同できた。既知の気安さでこぼされた『あなた様の身の回りを担う従者よりも、セリウスの能力はむしろ事務方向き。彼のように優秀な人材というのはそうそう出会えるものではありません。ということで陛下、なんとか彼を侍従長官室付きとして寄越していただくわけにはまいりませんかね?』の台詞にはさすがに閉口したが。
 とにかくセリーヌは、並の男などとは比較にならぬほど優秀だった。
「……これは嬉しい想定外だな」
 口角の緩みを自覚しながら小さく呟き、なんの気なく壁の時計に目を向ける。時刻は、正午を二十分ほどすぎたところ。セリーヌが俺の使いで書記官室に向かったのが十一時半だ。
 ……遅いな。いくら広大な宮廷内とはいえ、一時間近くも戻らないのはおかしかった。
「仕方ない、様子を見にいくか」
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