男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「すぐに戻らずに、申し訳ございません。使いの後、行き合ったニーナが古傷が痒むのか落ち着かない様子でしたので、軟膏を塗っておりました」
 覗き込むと、セリーヌはニーナの体にひきつれとなって残る傷跡に軟膏を塗りながらマッサージをしてやっていた。
「セリよ、何度も言っておろう? お前は俺の従者だ。ニーナの飼育係は別にいる。お前がそんなことまでする必要はない」
 俺は他人の目のあるところでは、彼女を『セリ』とだけ呼んでいた。どうしても彼女を『セリウス』の名では呼びたくなかったのだ。
「すみません。ですが、どうしても私がしてやりたかったんです」
「フシャャァー!」
 セリーヌの声に合わせ「邪魔をするな」とばかりに、ニーナが本来の飼い主である俺を威嚇する。
「俺に命を救われた恩を忘れおって。まったく、現金な奴だ」
 事実、あの時のニーナは衰弱しきっており、俺が腕を見込んで直々に引き抜いた宮廷医の処置でなければ、助からなかっただろう。
「こーら、ニーナ。恩人のサイラス様にいけません」
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