男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません！

　翌日の夜。居室と間続きの私的な政務室で最後の決裁書類にサインをし、一日の政務を終えようかというところで、侍従長官のゼネダが報告を携えてやって来た。政務机の脇ではセリーヌが処理済みの書類を整えていたが、かまわずにそのままゼネダの報告を聞いた。
　ゼネダの報告は『引退した父親の後釜に収まる格好で宮廷に出仕するようになった息子の態度があまりにも目に余るため、書面による注意、指導を実施した。今後も勤務態度に改善が見られぬようなら、次の処分に移る』と、こうだった。
　通常、出仕したての貴族令息、特に高位貴族出身で上昇志向の強い若輩は己の優位を誇示したがって、宮廷内の輪を乱しがちだ。彼らは愚かにも臣下として宮廷に上がる意味を、まるでわかっていない。一方で、セリーヌは誰に教えられずともその根幹を正しく理解していた。俺はゼネダの報告を受けながら、同じ出仕者でこうも違うのかと、改めて彼女の優秀さを噛みしめた。
　ゼネダは報告が済めば不要な長居はせず、早々に退室していった。