男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
木々が生い茂る樹林は右を見ても左を見ても似たり寄ったりの景色が続き、方向感覚を狂わせる。私は自分がやって来た方向すらわからなくなっていた。
「ねぇセリウス、私たちがどっちから来たか覚えている?」
「ううん。小さな鳴き声を聞くのに必死だったから……」
――パキンッ。
その時、背後で小枝を踏みしめる音があがる。ハッとして振り返ると、筋骨隆々の見上げるほどの長身に黒衣を纏った男性のシルエットが目に飛び込む。
「其方ら、そこでなにをしている。ここは国立研究所の調査対象の希少樹の生息場。何人にも立ち入りは許可していない。事と次第によっては、ただではおかぬ。子供と言えど牢屋行きは免れんぞ」
「申し訳ございません! 葬儀に参列の後、庭園を散策させていただいておりましたら、こちらの樹林から子猫の鳴き声があがるのを耳にし、思わず飛び込んでしまいました」
光の加減で男性の表情は窺えないが、身震いするような厳しい声音で誰何され、私は咄嗟に腰を折って謝罪を述べる。
「子猫?」
「ねぇセリウス、私たちがどっちから来たか覚えている?」
「ううん。小さな鳴き声を聞くのに必死だったから……」
――パキンッ。
その時、背後で小枝を踏みしめる音があがる。ハッとして振り返ると、筋骨隆々の見上げるほどの長身に黒衣を纏った男性のシルエットが目に飛び込む。
「其方ら、そこでなにをしている。ここは国立研究所の調査対象の希少樹の生息場。何人にも立ち入りは許可していない。事と次第によっては、ただではおかぬ。子供と言えど牢屋行きは免れんぞ」
「申し訳ございません! 葬儀に参列の後、庭園を散策させていただいておりましたら、こちらの樹林から子猫の鳴き声があがるのを耳にし、思わず飛び込んでしまいました」
光の加減で男性の表情は窺えないが、身震いするような厳しい声音で誰何され、私は咄嗟に腰を折って謝罪を述べる。
「子猫?」