男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 その瞬間は、これまでの快感が一瞬で吹き飛ぶくらいの鮮烈な痛みが走り抜け、目から涙が散った。彼は一旦動きを止め、心配そうに私を見下ろす。
「大丈夫か?」
 労りの篭った問いかけに、「もう止めて」のひと言が喉から出そうになる。
「……は、はい」
 なけなしの理性でなんとかのみ込み、続く行為で間違っても否定の言葉を声に出さぬよう唇を引き結ぶ。両手は、固くシーツを握り締めた。
「頑固者め。ここで握るのはそこではない。俺の肩に掴まっておけ」
 サイラス様は呆れ混じりに囁きながら、私の拳をそっと包み込んでシーツから剥がし自分の肩に置く。逞しい肩に両腕で縋り付くような格好になった。
「これは契約だからな、止めてはやらんぞ。だが、引っ掻いても噛みついても構わん」
 サイラス様はこんなふうに続けたが、言葉とは裏腹にすぐに行為を再開しようとはせず、私の腰や背中をさすりながら小さなキスを繰り返す。
< 97 / 220 >

この作品をシェア

pagetop