お見合い相手から溺愛されて困っています。
そんなある日、彼女は目を晴らして仕事をしていた。顔は笑っているが目に覇気がない。
小さなミスが多く心配になった。

このところよく通っていたので親しくなった店長に声をかけると、彼女は彼氏に浮気されショックを受けているのだという。
長く付き合っていたようだし、年齢的にも結婚を意識していただろうからショックなんだろう、と。
たしかに女性は男性よりも年齢を気にするものだ。ましてや長年付き合っていた挙句の浮気だ。許せるものではないだろう。こんなにショックを受けるほど好きだったのか、と思うと俺の心が騒がしい。

店長に俺との見合いを勧めてもらえないか?と話をするとニヤニヤしながら「祐と?」と聞いてくる。俺はフンッと言いながらそっぽを向き「そうだ!」と言う。

「名案だと思うよ。祐はあかりちゃんのこと前から気になってたんだもんな。チャンスだぞ。あかりちゃんの前の彼氏はさ、正直微妙だと思ってたんだよ。だから俺として別れて良かったと思ってたんだよ。あかりちゃんいい子だからアイツに振り回されてたしさ。」

「俺はあの子と仲良くなりたい。俺にも話しかけてほしい。」

「こうなったら善は急げだ!チャンスは逃すな。他の客もあかりちゃん目当てがいるんだからな。あの気さくで優しいあかりちゃんが別れたなんて聞いたらうちの客は騒がしくなるぞ。」

やはり他の客も彼女のことが気になってるのか…
あんなに親切で、気配りができて、挙句可愛いなんてみんな放って置かないだろう。

「そうだな。善は急げだ!他の客なんかに触れさせるわけにはいかない。」

「でも祐…あかりちゃんは傷心なんだからな。恋は駆け引きだからな。」

駆け引きか…
彼女を前にしてそんな器用なことができるか分からないが俺に落ちてきてほしいと思った。
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