年下のかわいい後輩くんが彼氏になりました
「ねぇ、先輩。俺のこと、覚えてない?」
私に話しかけてるの?私は立ち止まり、後ろを振り返る。
さっきは良く顔も見ずに話していたけど、こうしてじっくり見ると、確かにかっこいいかも。
「私、あなたのこと知らないけど」
「山崎優菜(ヤマザキ ユウナ)先輩でしょ?」
「な、なんで私のこと知ってるの?」
「ふーん、そっか。覚えてないんだ。俺は一年の斉藤啓太(サイトウ ケイタ)」
あら、自己紹介してくれるんだ。
「優菜先輩、かわいいっすね」
「えっ?」
「って言ったら、”かわいいって言われちゃった、ちょっと嬉しいかも”なんて思うわけ?」
「そんなこと、思わないから!」
「ふっ、分かりやすいっすね。顔、赤いですよ」
「ばっ、ばかじゃない!気のせいよ、そんなの」
「俺、優菜先輩のせいで告白断っちゃったんですけど。どうしてくれんの?」
「は?私、関係ないよね?」
「俺、一生結婚できないかも」
「そんなの、ただ噂でしょ。それが本当だったら私も一生結婚できないし」
「ふーん、優菜先輩って付き合ってるヤツいないの?」
「わ、悪い?私も知らない人とは付き合いたくなかったの」
「じゃ、俺と付き合う?」
「斉藤くんのことも知らないし」
「さっき自己紹介したよね?じゃ、明日からそう言うことで!」
そう言って斉藤くんは私を追い抜かして行ってしまった。
その場に取り残された私は、驚きのあまり何も言葉を発することができず、走り去る斉藤くんの後ろ姿を目で追うことしかできなかった。