年下のかわいい後輩くんが彼氏になりました
お母さんが見えなくなってから、啓太が急にしゃがみ込んだ。
「うっわー、マジで緊張した。俺、変なこと言ってなかったかな?大丈夫だった?」
「立派な挨拶だったよ。さすが、中学のバレー部で鍛えられただけあるね。啓太、かっこよかった。ありがとう」
「あー、まだ心臓バクバクだよ。次はお父さんに挨拶しないとな」
「それね、言いそびれてたんだけどさ。私が小さい時にうちの親も離婚してて。お父さんは一緒に居ないの」
「えっ?そうだったの?じゃ、ずっとお母さんと二人だったの?中学の時、出会ったあの頃も?」
「うん、そうだよ。でも寂しくなんてないよ」
「マジで?俺の方が全然知らないんだな、優菜のこと」
そう言って啓太が急に私を抱きしめて。
その体が震えていた。
「どうしたの?啓太?」
啓太の手をほどいて、啓太を見ようとしたら、
「ちょっと、見ないで」
啓太の目が赤かった。
「啓太?なんで?なんで啓太が泣くの?」
「だってさ、中学の頃の優菜はさ、あんなに明るくて、ブレてなくて、お父さんがいなかったなんて微塵も感じさせなくて」
「離婚したのは私がまだ小さい頃の話だし。もうお父さんがいないことが普通になってたって言うかさ」
「それなのに、俺はどうだよ?親の離婚に悩んで、自暴自棄になって。周りにたくさん迷惑かけてさ」
「うん。いいんだよ、それが普通じゃないの?たくさん迷惑かけていいんだよ、啓太」
「俺、優菜を尊敬する。俺、優菜が一緒にいてくれることを皆に自慢したい。そんな気分だよ」
「ふふっ、啓太っていつも変なことを言う。さ、涙を拭いて。もうすぐ学校に着くよ」
そう言ってハンカチで涙を拭ってあげた。