愛して欲しいなんて言わない!
10時45分
玄関のカギが開く音が聞こえた

すぐに部屋から出ていこうかと思ったが
青山先生のスリッパが動く音が耳に入ると
ベッドから出た足を布団の中に
引込めた

私が行ってはいけない気がした

私の姿がない状況で
青山先生が出迎えたら
西九条はどんな反応をするのだろう

気になる

一度は体の関係をもった二人だ
抱き合ったりするのだろうか?

私は静かに布団から出ると
忍び足で部屋のドアへと近づいた

ドアに耳に貼り付けて
玄関から聞こえてくる声に集中した

「青山先生?
なんでここにいるんです?」

玄関から西九条の驚いた声が聞こえてきた

「週末だから」

「だから?」

青山先生の声は明るい
西九条は…少し低い声に感じた

「一緒に過ごしたくて」

「小西は?」

「もう寝たみたい」

「そうか
じゃあ、帰ってくれ」

「え?」

「何を勘違いしているか
知らないが、勝手に家にあがらないで欲しい」

「隼夜?」

「それと呼び付けも困る」

「どうして?」

「青山先生とは同じ学年の教員
それだけの関係です

それとも小西が
あがっていけと言った?」

「そ…そうよ」

「それでも今すぐに帰ってほしい
タクシーを呼びますから」

西九条の足音が近付いてきた
居間で足が止まると
電話をかけ始めたらしい

タクシーを一台
ここに来るように頼んでいた
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