愛して欲しいなんて言わない!
電話が終わると、西九条と青山先生が
家を出て行った

西九条は青山を見送りに行ったのだろう

私は部屋の電気を消すと
シングルのベッドに戻った
まだ温かみのある布団に足を入れると
横になる

太陽の匂いがした

きっと鈴子さんが
干していてくれたんだ

使ってないってわかっていても
清潔を保つために
こまめに干してくれたんだ

横になって初めて気がついた

ただ裸のベッドでは
見た目がさびしいから
布団が敷いてあるのだと思ってた

ふわふわの布団に枕は
気持ちがよかった

5分もせずに
西九条が戻ってきた

今度は一人だ

青山をタクシーに乗せてきたのだろう

寝室のドアが開く
そしてすぐに閉まると
私の部屋のドアが開いた

静かにドアが閉まる
足音をたてないように
西九条が近づいてきた

「理菜?」

小声で私の名を呼んだ

どうしよう
ここは寝ているふりをするべき?

それとも起きていたと
顔をあげるべき?

ベッドが沈んだ
西九条が座ったようだ

私の髪を優しく撫でてきた

西九条の体からは
酒の匂いと煙草の臭いがした

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