愛して欲しいなんて言わない！

「仕事、大変なのか？」

私は大きなダブルベットの布団の中に
足を突っ込むと口を開いた

冷たい布団に私は身震いを一回する
隣ですでに枕に頭をつけようとしている
西九条が私の手を握ってきた

いつも１１時に私と一緒に寝ていて
仕事が溜まっているのではないのか
そんな風に思った

学年主任がどんなことをするのか
私は知らない
でもクラス担任以外にも仕事がある
…というのくらいはわかる

飲んで帰ってきて
２時まで仕事をしているなんて
大丈夫なのだろうか？

「それより夕食はどうした？
食べなかったのか？」

「え？」

冷蔵庫に入っていた夕食を
私は思い出した

「ああ…うん
食べなかった」

「体調でも悪いのか？」

布団を首までかけて横になった
私を西九条が抱きしめてきた

西九条の体は温かくて
気持ちが良い

酒臭さ、煙草臭さはすっかり消え
ボディーソープとシャンプーの匂いが
空気中を漂った

「ううん
ただ、食べ損ねたっていうか」

「食べ損ねた？」

「７時前に食べようと冷蔵庫を
開けたんだけど
なんか食べる気がしなくて

お腹が減ったら食べようと
思ったんだ

そした青山先生が来て…」

「食べる機会を失ったのか？」

私は西九条の腕の中で頷いた

「気にせず、食べれば良かったのに」

「そうなんだけど」