愛して欲しいなんて言わない!
「理菜さん、ちゃんと妻の務めを
果たしているかね?」

「は?」

ソファとダイニングのテーブルの間に立っていた私は
西九条の父親の顔を見た

「だから妊娠したのか?
と聞いているんだ」

苛々した口調で
説明をする

すぐに怒るところは
西九条とよく似ている

「妊娠?」

「まだ早いだろ
理菜は高校生だ」

西九条がキッチンから
口をはさむ

「年齢など関係ない
妻になったなら
夫の子を産むのが当たり前だ

とくに西九条家は後継者が必要なのだ
若ければ、若いほど良いのだ」

「理菜にだって生活はある
無視するな」

「無視だと?
女は子を産めればそれでいいんだ」

ひどい男だ
私はダイニングの椅子に座った

居間には行きたくない

「お前の口ぶりだと
セックスしてないな

今すぐしてこい
ここで待っていてやる」

え?
私は驚いて
西九条の顔を見た

西九条は首を横に振った

「そんなに子供が欲しいなら
愛人に産ませればいいだろ!

俺たち夫婦に口を出すな」

「愛人だと?
そんな低俗に産ませた子など
必要ない」

低俗?
愛人を作っておいて
低俗呼ばわり?

本当にひどい男だわ

「お前の母さんは
良い女だったが
子供ができないんじゃ
意味がない
早くに離婚しておけばよかった」

私は西九条の父親を睨んだ
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