愛して欲しいなんて言わない!
「流産がいけなかったのだ
あれから子が出来なくなった
無用な女に、期待しすぎたな」

私は立ち上がると
座っていた椅子を蹴りあげた

苛々する
女をただ子を産む道具としか
見ていない

西九条が自立しているのが
よくわかった

こんな悪魔のような男の傍にいたら
同じように堕落するか
自立するしかない

「残念だったな
私は妊娠できない体だ!
一生後継ぎはできない

それともすぐに離婚するか?」

怒りの勢いに任せて
口から言葉を出すと
自室のドアを荒々しく閉めた

続けて西九条の怒鳴り声が聞こえた

私にではなく
父親の無礼に対して
西九条も怒ったようだ

すぐに西九条が
私の部屋に飛び込んできた

「大丈夫か?」

心配そうに声をかけてきた

私はベッドに座って
西九条の顔を見た

「何が?」

「だって…親父が」

「平気だよ
妊娠できない体だ…なんて
嘘ついちゃった

あ、でもそれは事実かもしれないけど
よくわからないけど…」

どうしてだろう
私の目には
涙が溢れてきた

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