愛して欲しいなんて言わない!
「悪かったな
親父は昔からああいうヤツなんだ」

西九条が
私の肩を抱いてくれた

優しくて私の涙が
飛び出した

「母は父のストレスから
流産したんだ
それから子を産めない体になった
でも父が怖くてその事実を言えなかった
だからまだ子供ができるだろうと
父は半ば強姦に近い形で母を犯してたんだ」

「西九条が
すぐに体の関係を強要してこない理由が
わかった気がする」

西九条が私の耳元で
ふっと笑った

「強姦される母を何度も目にした
だからセックスは好きじゃない」

私の手は自然と上がり
西九条の広い背中をさすっていた

今は
私より
西九条のほうが泣き出しそうだ

私の視線があがる
ドアの隙間から
のぞいている男がいた

「ひっ!」

私は驚いて
西九条から離れた

私の悲鳴を聞いて
西九条が振り向くと
ドアに向かって歩き出した

「何のつもりだ」

のぞいていたのは
もちろん
西九条の父親だった

「さっさと抱きなさい」

父の発言に
西九条の目がつり上がった

「その前に
病院だ!
ちゃんと子が産める身体かどうか
調べる必要がある」

「調べる必要なんか
ねえだろ」

「ある!
子が産めない女に意味はない」

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