愛して欲しいなんて言わない!

留守電

家に帰ってくると
留守電のランプが点灯していた

『あー
私だが、理菜さんに話がある
すぐに電話するように』

低いダミ声が室内に
響いた

私はソファに鞄を置きながら
西九条の顔を見た

「電話しなくていい
着替えておいで」

私は頷くと
自分の部屋に入った

ドアを閉めると
すぐに西九条の声が聞こえてくる

西九条が
電話してくれたようだ

間もなく
西九条が怒鳴り始める

始めて聞く西九条の怒鳴り声だ

どうにもならない感情を
父親にぶつけているのだろうか

私は胸が痛んだ
だって
私が退学していれば
万事解決していたかもしれないのに

西九条は私の将来を気にして
自らが犠牲になることを
選んでくれた

私には何ができるだろうか

私は着替え終わると
居間に向かった

私が自室のドアを開ける頃には
西九条は父親との電話を
切っていたようで
ソファに座っていた

「電話、なんて言ってた?」

「オヤジのこと?
気にしなくていいよ」

「気に…するよ」

「理菜にはきちんと卒業してもらうって
話しただけだよ」

「ごめんね」

「何が?」

西九条が手招きをした
私がソファに近づくと
両手を広げて抱きしめてくれた

「私のせいで…」

「違うだろ
結果を急ぎ過ぎるオヤジが
いけないんだ」
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