愛して欲しいなんて言わない!
恐る恐る階段を降りて
店に覗き見ようとすると

「理菜、帰ろう
店を経営しているご友人に
ご迷惑をかけていけないよ」

優しい頬笑みで西九条が
私に手を伸ばす

騙されるものか!

私はキッと西九条を睨むと
2階に駆け上がろうとする

「ほら帰るよ」

素早く階段に移動した
西九条が私の腕を掴んだ

その手は強く私の腕をつかみ
痛さで思わず顔が歪んだ

痛いんですけど!

「ガソリン代が勿体ないだろうが
阿呆!」

私の耳元で
西九条の低い声が呟いた

とても怖く
意地悪な言葉だ

こいつ
2重人格だ!

嫌な奴だ

絶対に
こいつのところには
行きたくない!

西九条の手を振りほどいて
2階に逃げようとするが

西九条の力には
逆らえず
1階へと私の足が勝手に動いていく

「本当に
申し訳ありません

後日、このお礼をしに伺いますので」

西九条は爽やかにほほ笑むと
ずるずると私を引っ張って
外に出て行った

< 26 / 151 >

この作品をシェア

pagetop