愛して欲しいなんて言わない!
「何、するんだよ」

強がってみる
西九条の胸の中で
暴れた

「強がるな
どうしたい?

お前は何がしたい?」

強がる?
私が強がってるって
西九条は知っている

この場所から
離れたいって思っているのも
理解している?

何で?
どうして

今の西九条は優しいの?

「理菜!
なんてことをしてくれるの」

母親が階段をあがってくると
大きな声をあげた

素っ裸で布団をかぶる男は
母親の後ろに隠れるように
助けを求めていた

お母さんは
私より愛人が大事みたいだ

そして
私より西九条の地位を優先した

私の気持ちを
理解してくれない

「ああ、どうしましょう
西九条さん
きちんとご説明しますから
居間でお茶でも……」

「お前はどうしたい?」

西九条がまた
私に聞いてきた

「外に行きたい」

「わかった」

「西九条さん?」

お母さんが西九条の腕に
そっと触れてきた

「失礼
ここに来たのは間違いでした」

西九条は
母親の腕を払うと

私の肩を抱いたまま
外に出てくれた

庭に停めてある車に
乗ると
目的もなく
車を走らせた
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