愛して欲しいなんて言わない!
温かい……

私は唇にぬくもりを感じて
目を覚ました

まだ部屋は暗かった

シーツが動く音が聞こえると
唇から温かさがなくなった

冷たい空気が
私の唇を包む

…え?

今のは何?
キス

…だよね

きっと
キスだ

隣に寝ているのは
西九条だ

なら

キスをしたのは西九条?

掛け布団が動いた
西九条が布団から足を出して
ベッドから出ていく

影が動き
私の顔を覗き込むのがわかった

私は瞳を閉じて
寝た振りをする

西九条の温かい手が
私の髪をとかす

そして布団を肩までかけてくれた

スリッパの音がドアに近づいていく

音をたてないよう静かにドアを開けて
西九条が部屋を出て行った

すぐに隣の部屋から明るい光が漏れてきた
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