愛して欲しいなんて言わない!
眠れずに6時になった

西九条のスリッパが寝室に近づいてくる

私を起こしに来る

ドアを開けると
大股で私の前に立った

「理菜、朝だぞ」

なぜだろう
今日は優しい声で私に言ってきた

調理中に何度も冷たい水に触れた
西九条の手が冷たくなっていた

その冷たい手が
私の首筋を触った

「ひゃ」

私は声をあげた
西九条の手がこんなに冷たいとは
思わなかったから

思ったより
可愛げのある声で
私は自分の声に驚いた

「おはよう」

目をあけた私の顔を見た西九条が
優しい目で口を開いた

優しい
なんで?

優しすぎる

西九条が怖いくらい優しかった

「おはよう……ございます」

私は今、起きたかのように
目をこすりながら
起き上がった

「ご飯、出来るよ」

「はい」

「着替えて来い」

「うん」

「どうした?」

西九条が私の顔を
覗き込んできた

「何が?」

「今日はやけに
寝起きがいいな?」

「え?」

私はどきっとした

西九条の顔が近くにある
それが
私の心臓を刺激する

頭に鼓動の音が響く

「生活リズムが整ってきたか?」

「わからない」
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