愛して欲しいなんて言わない!
マンションの近くに来ると
私の足取りが重くなった

別に悪いことはしていない

でも罪悪感を感じていた

なんでか
わからない

けれど
西九条が怒っているのではないか?

そんなことを
駅からの帰り道
考える

制服のポケットの中で
携帯が震えた

マナーモードにしている携帯が
光っていた

『今日はありがとう!
今度、きちんとお礼をさせてください』

別にお礼なんて
いらないけど

そういうの面倒だよ

私はマンションのエントランスに入った

「おい!」

背後から低い声が聞こえてくる
私は勢いよく振り返ると
西九条が怖い顔をしてソファに座っていた

「は?」

スーツではなく
普段着でエントランスのソファに
座っている西九条は
ゆっくりと立ち上がると
私を睨んできた

普段着を着ているということは
西九条は一度家に帰っているらしい

豪華で広いエントランスとは
不釣り合いな格好の西九条が
不満なオーラを放っていた


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