幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 エルフも置き引きに遭うものなのか。それとも、全エルフの中で、彼が特別鈍いということなんだろうか。
 リーゼがおやつに持ってきたパンを差し出し、それをぺろりとたいらげた彼は、ようやく落ち着きを取り戻したようだった。

「じゃあ、お兄さん行くところないの?」
「アルダリオン、と呼んでください。ええ、行く当てのない旅をしているところですよ。人間の世界はとても刺激的ですから」
「珍しいな、エルフはめったに森から出ないだろ」

 サージの言葉に、アルダリオンはうなずいた。

「ええ、私は変わり者なんです」

 アルダリオンの話によれば、エルフは"見えない森"という、エルフ特有の魔術で他種族の目には触れないようにした森の中での生活を選ぶ者が大半らしい。
 アルダリオンのように、自ら好んで外に出ていくというのは例外中の例外なのだそうだ。

「それから、王族は、一度は外の世界を見てくることを義務付けられていますね。この世界は、女神アビゲイルのもとに平等です。他の種族の存在を無視して、エルフだけでは生きていけませんからね」
「へぇ、そうなんだ」

 この世界にエルフという種族が存在しているのは知っていたが、なかなか出会う機会がなかったのは、自らの居住地から出てくることはめったにないからのようだ。
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