幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 デリモの西側は川に面している。けれど、誰もそんな話をリーゼにはしてくれなかった。

(……やっぱり、信頼されてないんだろうな)

 皆には気づかれないようにため息をひとつ。リーゼが領主として信頼されるには、いったい何が必要なのだろう。

(あ、でも……)

 リーゼの持つスキルは、"硬化"。硬くしたり固めたりすることしかできない。けれど、その効果は絶大であることを、リーゼは今までのうちに検証を終えていた。
 丸めたパンを硬くしたものは、いまだにその硬さを保ったまま。火に入れても燃えることはない。水に浮かべたけれど、水を吸うことはなかった。
 そして、様々な変化を加えたのちも、その硬さは変わらないまま。
 リーゼの魔力は膨大だから、毎日少しずつ堤防を固めていくというのはどうだろう。少なくとも、周辺の住民の役には立つし、今、リーゼにできることの中で唯一領主らしいことのような気がする。

「ねえ、皆。私、明日から堤防を固めることにする。今、私にできることって、そのぐらいだと思うの」

 それに、そろそろ長雨の季節がやってくる。その前に、堤防を固めておけば、皆が安心して暮らすことができるのではないだろうか。

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